本章から三浦弘行九段が升田幸三賞を受賞し、一時は対藤井システムの主力と
なっていたミレニアム囲い、他にトーチカ、かまぼことも呼ばれていた
戦型について解説します。
「図1」までの手順
▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽4四歩 ▲4八銀 ▽4二飛
▲6八玉 ▽9四歩 ▲7八玉 ▽7二銀 ▲5六歩 ▽3二銀
▲5八金右 ▽4三銀 ▲2五歩 ▽3三角 ▲3六歩 ▽6二玉
▲6六角
「図1」
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v銀v玉 ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 角 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=19 ▲6六角 まで
「図1」はミレニアムの出だし独特の角の序盤からの動きとなります。
この角出は他に角田流の端攻めや、振り飛車穴熊に対する地下鉄飛車など
本当に一部の戦型でしか現れません。
「図1」から「図2」までの手順
▽5二金左 ▲7七桂 ▽7一玉 ▲6八金寄 ▽5四銀 ▲3七桂
▽6四歩 ▲8九玉 ▽7四歩 ▲8八銀 ▽8二玉 ▲7九金
▽6三銀引 ▲7八金寄 ▽9五歩 ▲1六歩 ▽7三桂 ▲5九銀
▽5四歩 ▲6八銀 ▽6五歩 ▲5七角 ▽4五歩
「図2」
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v桂v銀 ・ ・v角v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 桂 歩 角 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 銀 金 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=42 △4五歩 まで
▲7七桂 ▲3七桂と両方の桂を上がり、6六に上がった角を5四の銀で
狙われないようにし、藤井システムのような後手側の角筋からの攻撃を
▲8九玉とこちら側に避けて囲うのがミレニアムです。
角筋に玉が居なく端攻めに対して、穴熊や串カツよりも影響が少なくなり
後手も急な仕掛けは無いので▽6三銀とダイヤモンド美濃に組み替え、
その間先手も▲1六歩と後手の▽1五角を消す俗にいう”居飛車の税金”から
▲5九銀 ▲6八銀とミレニアムを完成します。この形のミレニアムは他に
トーチカとも呼ばれます。後手も▽6五歩と角を追い▽4五歩として自然な
駒組みとなった「図2」では互いに十分に見えますが、既に先手の術中に
嵌まっていて、このダイヤモンド美濃に固める策は思わしく無いのです。
「図2」から「図3」までの手順
▲2四歩 ▽同 歩 ▲2六飛 ▽4三飛 ▲3五歩 ▽同 歩
▲同 角 ▽7五歩 ▲3四歩 ▽2二角 ▲7五歩 ▽7六歩
▲2四飛 ▽2三歩 ▲2六飛 ▽7七歩成 ▲同銀右 ▽8五桂
▲7六銀 ▽9七桂成 ▲同 銀 ▽9六歩 ▲8六銀 ▽9七歩成
▲同 香 ▽同香成 ▲同 銀 ▽7七香 ▲8六銀
「図3」
後手の持駒:桂 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金 ・ ・v角 ・|二
| ・v歩 ・v銀 ・v飛 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・ ・|四
| ・ ・ 歩v歩 ・v歩 角 ・ ・|五
| ・ 銀 銀 ・ 歩 ・ ・ 飛 歩|六
| ・ 歩v香 歩 ・ 歩 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:桂 香 歩四
手数=71 ▲8六銀 まで
玉が互角以上の固さが確保出来る場合は引き角系は、かなり強引な攻めも
成立する事が多く、この場合でも▲2四歩から一旦▲2六飛と慎重な手順で
仕掛ける手が有ります。これに1歩を得た後手が▽7五歩と先手の弱点の
桂頭を狙い反撃が決まりそうに見えますが、▽8五桂に▲7六銀と真っ直ぐ
避けるのが好手で以下、「図3」では後手のこれ以上の攻めは難しく先手優勢です。
もし先手の玉形が前章の串カツだった場合、▽4二角から▽9六歩 ▲同歩に
▽9七歩と玉頭を反撃して後手が有利になります。そう言う意味で串カツより
このミレニアム低空バージョンの方が優秀と言えます。
「図1」から「図4」までの手順
▽7一玉 ▲7七桂 ▽8二玉 ▲8八銀 ▽5四歩 ▲3七桂
▽5二金左 ▲6八金寄 ▽6四歩 ▲8九玉 ▽6三金 ▲7九金
▽7四歩 ▲7八金寄 ▽7三桂 ▲1六歩 ▽5二飛 ▲5九銀
▽6五歩 ▲5七角 ▽5五歩
「図4」
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v飛 ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v桂v金 ・v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 桂 歩 角 歩 桂 ・ ・|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 玉 金 ・ 銀 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=40 △5五歩 まで
この低空バージョンのミレニアムには玉側の桂頭以外に、角頭が弱いと言う点が
有りそこを狙って▽7三桂から▽5二飛と中飛車に振り直し中央から反撃と言う
手段が有効になります。▲1六歩と突く手で▲5九銀と行くのは一旦▽1五角を
利かせてから▽5二飛と回られます。また「図4」で▲2四歩と突いても構わず
▽5六歩と取り込み後手優勢となります。
ミレニアム低空バージョンは藤井システムを避け、穴熊に準ずる堅陣が得られ
優秀な戦法では有るのですが、藤井システム以外だと初めからツノ銀中飛車などで
中央を狙われ上手く行かない場合も多い為、採用されなくなりました。
ただ形に拠っては有効な囲い方です。次章ではミレニアム▲6七金型(▽4三金型}を
解説します。