本章では鷺宮定跡に対して最強の対抗策であった24手目▽1二香に
中原永世十段が多用した有力な戦法が有るので御紹介します
「図1」
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v玉v銀 ・v金v飛v銀 ・v香|二
| ・v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=24 ▽1二香(11) まで
「図1」は前章「図1」と同一局面、▲5七銀左型に後手が24手目
▽1二香とした所です
「図1」から「図2」までの手順
▲6八金上 ▽5四歩 ▲6六歩 ▽6四歩 ▲9七角
「図2」
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v玉v銀 ・v金v飛v銀 ・v香|二
| ・v歩v歩 ・ ・ ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 角 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=29 ▲9七角(88) まで
前章では▽1二香に▲3八飛と鷺宮定跡に出ましたが結果は思わしい物では
有りませんでした そこで▲6八金直(上)と上がり後手の出方を見ます
ここで▽6四歩は▲3八飛としていない局面では有効で無いのと6八の位置が
塞がった事により先手側に141、142章の端角戦法の選択肢が消えたので
▽5四歩と突き▲3八飛なら▽4三銀で144章「図1」からの変化を狙います
その▽5四歩に▲6六歩と突いて▲6五歩の位取りを見せ、それを嫌った後手の
▽6四歩に▲9七角と覗くのが中原永世十段創案の有力戦法です
「図2」から「図3」までの手順
▽5三金 ▲6五歩 ▽9五歩 ▲6四歩 ▽9六歩 ▲8六角
▽6二飛 ▲9五歩 ▽6四金 ▲9六香
「図3」
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v玉v銀v飛 ・ ・v銀 ・v香|二
| ・v歩v歩 ・ ・ ・v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・v金v歩v歩v歩 ・ ・|四
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 香 角 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 銀 ・ 飛 ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩
手数=39 ▲9六香(99) まで
▽6三金に▲6五歩と突きます これに▽同歩と取ると▲4二角成 ▽同角
▲2二飛と銀香両取りに打って先手が有利となります ▽1二香とした手が
仇となってしまうのです 香が1一ならば▽4三角で次に▽3三角と飛車を殺す
手が有り逆に先手が不利となり、この戦法その物が成立しないのです
▽5三金から▽6二飛として▲6四歩の取り込みに▽9五歩と角頭を狙いますが
結果は「図4」まで端攻めを逆用されたうえ6四の金も動き難く後手不利となります
「図2」から「図4」までの手順
▽6三銀 ▲6五歩 ▽同 歩 ▲4二角成 ▽同 金 ▲7七桂
▽7二金 ▲3五歩 ▽同 歩 ▲3八飛
「図4」
後手の持駒:角 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v玉v金 ・ ・v金v銀 ・v香|二
| ・v歩v歩v銀 ・ ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 桂 ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 金 銀 飛 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:飛
手数=39 ▲3八飛(28) まで
▲9七角には▽6三銀と受けるしか無く、以下「図4」の局面は形勢は不明ですが
形を乱して振り飛車の特徴である玉の固さが生かせなくなっていて居飛車側に不満は
無いと言えるでしょう
実戦例が少ない戦型ですが、▲5七銀左に対する▽1二香形には有力な手段と言えます
どんな形にも完璧と言う物は無く、一つの狙いを封じれば別な策が生じる物なのです